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音色への情熱





考えに考え抜いた挙句の答え

アーティストピアノサービスの成功の裏には、とてつもない努力と苦々しい経験が多々存在します。壁にぶつかる度にわたしたちは、「良いピアノとは何なのか?良いピアノ調律師になるための必要不可欠なフィールドとは?ピアノの音色とはそもそも何なのか?」と考えに考え抜く機会を与えられ、その考え抜く時間がアーティストピアノサービスの方向性を明確に導くこととなりました。わたしたちが導き出した答え、それは至って自然な言葉に集約されています。

”アーティストたちとの積極的なリレイションシップを通して、最高峰の場へ挑み続けること”

何時も、自分たちが挑戦者でいるということは、情熱と物凄いエネルギーが集まります。皆音楽が好きで、ピアノがどうしようもなく好きでこの仕事に携わっているとはいっても、一流演奏家たちの仕事などそう簡単に回ってくるものではありません。しかし、今の自分たちにはその巡り合わせがあり、情熱を一身に傾ける事ができる。これ以上幸せなことはなく、やりたいこととアイディアが山ほど出てきます。
ピアノについて深く掘り下げ、広い視野で考えに考える機会をアーティストたちから与えられ、叩かれに叩かれて少しづつ実績を積み上げてきました。そして今、自分たちに与えられた”考える時間”は決して無駄ではなかったことが証明されつつあり、考え抜かれたわたしたちのピアノ哲学は確実に歯車がかみ合っています。




極限の世界を知るからこそ、誰にでも扱いやすい超高性能を実現できる
一定のトレンドラインを引いて音作りを考える


ピアニストが演奏してピアノ演奏会が成立するわけですから、結局は人間が扱いやすくコントロールしやすい物でなくてはならない・・・・ピアノの弾き手が欲しいと思うものは全て存在しなくてはならず、不必要と感じるものは極力排除する。決して数値に置き換えられるものではなく、とても曖昧と思われる世界観です。そして、大別される音の世界においては、誰かにとってスペシャルというよりは、誰が弾いても扱いやすいと感じるピアノこそが、本当に弾きやすい、扱いやすいピアノであると考えています。

人間の五感は、人によって感じ方がある程度違います。しかし、極度に違いが出すぎることも少ないと思われます。表面的に現れる違いについては、生まれもったものもあるかもしれませんが、人が育つ環境や経験値に相当左右されるはずです。それとともに、根底となるベースもしくはトレンドについては、大方同意見ということが多いのではないでしょうか。 何のデータを見ても言えることですが、100%ということはまずありえません。仮に100%という数値が存在してしまうのであれば、人間に与えられている自由意志や競争というものの存在意義が失われます。大方のデータ数値というのは、どんなに良い内容であっても70〜80%の人は『良い』と言うが、10〜20%の人は『好きではない』もしくは 『どちらでもない』、10%の人は『分からない』などの回答が多数見受けられます。 特異な事情を除いては、売れている商品や混雑する店舗などは、この70〜80%の人をうなずかせているからこその数値のはずです。
この話しをピアノに適用しますと、来日してくる世界の一流アーティストであれ、小学生であれ、好みの差は言われている程にまで激しくは存在しないと思われるのです。これはあらゆることに共通する概念かもしれませんが、一点のベーシカルなトレンドラインが存在し、そこから僅かな違いも存在するという考え方が、物事を簡素化して捉える助けになると思われます。そして調律師に求められるものは、“そのベーシカルなトレンドラインをしっかりと自らが有しているかどうか”ということに尽きます。つまり、どんなに素晴らしい技術を持っていても、トレンドを大きく外している音色を作る人物では、ピアノの弾き手から受け入れられないわけです。しかも、トレンドが自らにしっかりと刷り込まれていて、“絶対的な価値があり、普遍的な音色”として落とし込まれていなければなりません。わたしたちは、これを“絶対音色”だと思っています。好みに合わせて行くという行為は、この絶対音色を基本にして微細な調整を施すことだと理解しています。しかも、自らの絶対音色が独りよがりのものでは全く意味を成さなく、大方の人が聞いて納得の行く内容でなくてはなりません。

わたしたちのお客様は、やはり職業演奏家が中心になっています。も しくは、アーティストピアノサービスが職業演奏家たちに鍛え上げられてきたノウハウ に期待して、調律をご依頼いただくケースも多々あります。 基本的には、どちらの仕事であれ厳しい内容に違いはありません。双方ともに、ピアノ に対しての拘りが相当あるが故のご依頼ですから、調律師側も相当にしっかりとした価値観を持ち合わせていないと、お客様のおっしゃられることに振り回されてしまいます。 音という概念は、あまりに抽象的過ぎて捉えることが難しいものです。難しいからこそ、 絶対音色が必要になってきます。 ある程度アーティストの仕事の経験を積んで行くと、先生方にお会いした際のご性格や楽曲の好み、演奏スタイルなどから大よそ好みの見当がつくようになっていきます。調整に入る前から、その時点で大方の完成型は見えていますし、音も頭の中で聞こえてい ます。この直感が外れることは余りありません。またこの完成型が見えていないのだとすれば、暗黙にもしくは数値どおりに調整を施すだけで、調整自体にコンセプトや内容がありませんから、勿論音色にも内容がありません。内容のない音色をアーティストたちは嫌います。
今でもお付き合いいただいている、スタインウエイのフルコンサートピアノを自宅にご所有の先生に始めて仕事を依頼されたとき、「スタインウエイってさあ、色々じゃない。 ホールに置いてあるものもバラツキあるしね。これがスタインウエイっていう音って何なんだろうね。よくわからないんだよ。だから海外からも調律師を呼んだし、遠方からも随分と来てもらったんだ。君はどう思う。」とかなりシニカルな質問から始まったことを覚えています。こんなときこそ、自らの絶対音色しか信じるものがありません。現状の音色を聞いてどう仕上げて行くか、到達地点が直感的に頭に浮かび、想像力を最大限に働かせて完成型の音色が頭に響き渡らないと良い仕事はできません。大切なことは、 到達点が最初からある程度予想できていることです。そして、その到達点がトレンドであることも大切です。 自らの絶対音色に、お客様のご要望を付け足して音色を仕上げてゆきます。勿論この一辺通では行かないですが、大方はこれでうまくいくケースが多いです。 弾き手の好みというものを細分化すれば、それこそ数百数千という数で存在するかもしれません。確かにそれは存在するでしょうし、要求にも応えて行くのが我々の仕事です。 しかし、この項目では物事を簡素化して考え、むやみやたらに難しく理解することを避け、あえてトレンドと調整という言葉で片付けてみました。相当数のアーティストに鍛えられ、もみくちゃにされながら到達した考えです。
ただし、わたしたちの絶対音色については常に正しいとは思っておらず、警戒感を持っており、自らの価値観が正しいかどうかを日頃から見極める必要を感じています。そのジャッジメントを行うのは演奏家であり、自らの絶対音色が正しいなどと思い込む事はありません。今持ち合わせている感性を、鋭利な刃物を研ぐがごとく鍛錬を続けなければならないと考えております。全ては音に対してのバランス感覚であり、今日もジャッジメントを頂くために、新たな開発フィールドへ挑み続けるのです。



 

  一部メールマガジンから抜粋



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