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新しいスタインウェイピアノと中古スタインウェイピアノ

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コラム:新しいスタインウェイと中古スタイウェイ。Column

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新しいスタインウェイピアノと中古スタインウェイピアノ何が違う?

スタインウェイ・グランドピアノ中古
会員制のスタインウェイ・グランドピアノB型を主に扱うディーラー。欧米でもスタインウェイは中古に重きが置かれる傾向にある。価格なのか、音色なのか?その理由は何から来るものなのだろうか。


同じスタインウェイピアノでも、新しいスタインウェイと中古のスタインウェイで、音色には随分と大きな開きがあります。その上、日本と欧米でスタインウェイピアノという銘柄であっても、大きく音色が異なるのであれば、何段階にも渡り違いというものが存在すると言えるでしょう。
これは私が日々の仕事の中でも多々ぶつかる壁であり、プロデューサー、スタジオワーク、ピアノ販売、調律というカテゴリを仕事上行き来するが故、あらゆる角度からの多くの経験によって導き出されてきた、一つの回答とも言える指標を導き出しています。これまで多くのクライアントから、正に種々の要求を受けることで、スタインウェイピアノに対しては、考慮に考慮を重ね、またトライ・アンド・エラーを繰り返してきたと言えるでしょう。これから挙げるスタインウェイに対してのクライアントからの厳しい要求は、私を強くし、感性を鍛え上げ・磨き、そして世界への扉を開けてくれたとも言えるかもしれません。どんなに厳しい要求も最善を尽くし応え、精一杯の対応を行うことで、スタインウェイとは一体どういった性質持ち、音楽を形成しているのかを学ぶ良い機会ともなりました。


スタインウェイ・グランドピアノ
事例1:最高のスタインウェイを、響きの素晴らしいホールでレコーディングしたい。
以上の要求を受け、私はレコーディングプロデューサーとして、ホールの選定からピアノの選定、そして古コンサート・グランドピアノにおけるレコーディング全般において、全ての責任を果たすこととなりました。昨今の予算編成が厳しい状況にある中で、今回のレコーディングは多くの予算が事前に知らされ、同時にその期待をも一心に受け止めることになります。
特にピアノの選定におていは、クライアント側が相当に厳しい要求を出していたが故に、真新しいスタインウェイピアノでのレコーディングはありえない状況でした。細い倍音、ステンレスを磨き抜いたような音色、低音から高音まで全ての音域に置いてベルカントになること、タッチが繊細かつ大胆であること、メロディがよく歌うこと、鋭敏であることなど、これだけの条件をクリアしようとすると、流石に狭き門となり、殆の条件を超えることは出来ないと思えるほどの要項です。やっとの思いで探し出したホールも、ピアノが今一つで却下されることも多く、最終的にはピアノとの相性が良いとのことで決められました。
結果からすると、決定されたスタインウェイ・グランドピアノの年代は1970年代の製造品で、所謂現代のスタインウェイピアノとは、全く異なる音色です。確かに鋭敏であり、音色は非常に繊細な発音をしていました。数度レコーディングされるスケジュールの中に、1日のみ2000年台のスタインウェイピアノを使用する日取りが設定され、アーティスト側は非常に神経質になり、こちら側は全体像をよく見極め、全ての工程を卒なくこなす必要に迫られています。非常に厳しい種々の状況をクリアしながら、1970年代製造のスタインウェイは非常に繊細な音ともに収録を進めることが出来ました。やはりスタインウェイファンというのは、現代製造されるスタインウェイではなく、往年のグラモフォンなどで聴かれる本物の音色を探し求めており、その探されている音色を現実のものとするのが私の仕事であると思っています。それ故に、プロデュースをする側としては、諸条件の中でピアノが中心となる場合、ピアニストがスタインウェイを知っていれば知っているほど、一発勝負のレコーディングとなれば、なるべく昨今製造されたスタインウェイを外すように努力します。それは楽器自体が持ち合わせている能力として、明らかに昨今のスタインウェイがコストを意識する作りをしており、企業買収を繰り返すことでスタインウェイらしい輝きを失ってきたのは間違いないでしょう。
その失ったものに対して、ピアニストたちは非常に敏感な反応を示しており、私はこれまでにその鋭敏な感覚に泣かされることも多々ありました。例えば、このレコーディングスケジュールの折に、1日予定されていた2000年代のピアノを使用してのレコーディングは、結果として1テイクもOKが出なかったのと同時に、スタインウェイピアノに対しての不平不満を延々とクライアントから聞かなくては行けない状況に陥りました。クラアントから掛けられた言葉として、
『鈍くて変に手強いピアノだった』
という感想がもたらされ、学びの多い1日になったことは間違いありません。同じスタインウェイピアノであっても、その作りや音色というものは全く別物であり、これらをどう理解するかは、非常に重要なことと言えるでしょう。



グランドピアノ・スタインウェイ中古
事例2:ボストンのスタインウェイ・グランドピアノ。
真新しいスタインウェイピアノと、中古スタインウェイピアノを弾き比べる、これは目の前にその違いをハッキリと感じる事のできる環境であり、それが海外の高級ディーラーであるならば尚更分かりやすいと言えるかもしれません。欧米のスタインウェイグランドピアノは、明らかに国内に設置されているスタインウェイピアノとは音が異なり、もっと鮮明にサウンドが構築されています。色鮮やかなその音色というものは、驚くほどに繊細な表現をも可能とし、音楽の可能性と自らの才能を呼び覚ましてくれるものです。これはまさしく文化の違いであり、全てを揃える手法に心血を注ぐ国内勢と、如何にピアノを歌わせるかに重きを置く欧米勢の違いとも言えます。
そしてこのお話の場は、アメリカ東海岸を代表するボストンでの出来事です。ボストンと言えば、アメリカを代表するハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、ボストン大学やバークリー音楽大学などが所在し、学園都市として世界屈指の繁栄を誇っています。OB会も非常に盛んであり、その中には会員制のピアノディーラーを営む者もおり、通常の販売ルートでは手に入らないスタインウェイピアノや情報を得ることも出来ます。
ハーバード大学のOB会に来ていた ウィリアムは、会員制のピアノディーラーの運営や不動産投資を行う一流のビジネスマンでした。彼から用意された場は、スタインウェイ・グランドピアノのB型ばかりが置かれる、エクスクルーシブな空間でした。決して台数が多いわけではなく、一台一台のピアノが、高名な本国のスタインウェイ調律師により仕上げられています。
ウィリアムは、真新しいピアノを指し、
『新しいスタインウェイは、相当に整音の必要性が有るんだ。また、ナロー(細い)な響きをするから、これは好みが分かれるところ。中古のスタインウェイは、知っての通り何の説明もいらないだろう。しっとりとも華やかにでも鳴らすことが出来るよ』
との説明を加え、スタインウェイのグランドピアノを弾かせてくれました。どのピアノも、明らかに鮮明なサウンドが作り上げられており、新品であれ中古であれ奏でられる音が明らかに国内のものと異なります。色付けははっきりしており、100%の能力をピアノが出し切っていることも明確に感じ取ることが出来ます。新旧という概念ではなく、欧米と日本の感性という側面から、スタインウェイピアノの音が明らかに異なることを再確認できるものでもありました。また、更には新品と中古のスタインウェイ・グランドピアノを聴き比べることで、こちらにも明らかにその違いというものを知ることが出来ました。ウィリアムからは、日本に入ってこない情報を多々聞き出すことが出来るとともに、音色がどうして変化していったのかについても、ハッキリと理由というものが提示されました。
スタインウェイピアノは、1971年の企業買収から重要な位置を占める人材に変化が起こり、欧米人の感覚からすれば本来のスタインウェイ社の歴史は、その1971年で歴史が一度終わっているとの認識でした。企業風土が変われば、勿論それは音色にも変化が生じるわけであり、黄金時代を築いたスタインウェイサウンドは、終焉を迎えたと言えるのかもしれません。これまで私たちが、最も愛し憧れたスタインウェイは、既に過去のものとしてのみ手に入れられるという状況が明確になったと感じました。新品は品質における一定程度の安心感はありますが、これまで伝統的に愛されてきたスタインウェイサウンドは、70年台がマキシマムということで結論が出たという格好を取りました。70年台というのは、スタインウェイ社のニューヨーク本社が、グランドピアノへテフロンによるフレンジを制作したことでも知られますが、企業買収前でコスト削減を極限にまで考えた結果だったのでしょう。しかし、そのテフロンにおけるマイナス面はあるにせよ、明らかにスタインウェイの黄金時代に築き上げられた音色は伝承されており、その味は間違いなく他に類を見ない素晴らしいものです。
これは様々なクライアントからも寄せられる要求であるとともに、私が現地に出向き実際に肌身に感じたことであるとともに、大学で学んだ折にもピアノの音色の違いは、克明に感じ取ることの出来た思い出があります。これらを総合し、スタインウェイの新旧については、自らの中で一つの区切りとして、何故音色が異なるのかを理解できたと思っています。その他の要素としては、1985年にNYスタインウェイは、レンナー社製にアクションが変わったこと、1983年に一度設計が見直されたこと、1990年台になりさらなるM&Aが進んだことで企業風土が一気に転換期を迎えたことなど、ウィリアムからは多くのことを教えてもらいました。