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スタジオに230vの電源を導入

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コラム:機材の影響から音質の違いをどう捉えるか?Column

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230vの高電圧の電源から見えてくる音質の違いと感性の問題

スタジオの電源周り


日本国内で230vを運用するのは、ほぼ不可能と定義づけられています。これまであらゆる電気関係の方々に問い合わせ、国内の大凡の特注ショップなどにも聞き回りましたが、最終的には諦めるしか無い状況というのが大筋の見方かと思います。
それで100vでの駆動というのは、スタジオでは考えにくく、殆の機材が115vからを想定しているので、ユニバーサル電源であっても最低115vは目指すことになります。そして通常の場合は、200vをスタジオ内に引き、それをアメリカの規格である115vへ減圧して使うことが殆でしょう。或いは200vをそのままユニバーサル電源に用いるなど、この辺りは必要電圧を稼ぐという意味では当然の行為ですし、音質の向上も見込めます。実際当スタジオでも115vの導入は行っており、その性能というものは実感できるものがありました。
しかしヨーロッパで聴くことの出来る精密な音色というものは、機材を極めケーブルも一定のものを使用したとしても、どうにも追いつけない何かを長年感じていました。それはアメリカのスタジオで聴くことの出来る日本との違いではなく、もっと根幹の部分で異なる『何か』を感じざるを得ませんでした。精密、深度、鮮やかさ、そしてとてつもない透明感・・・、機材の不足なのか腕なのか、或いは他の何かなのか・・・あらゆる要素を探索しながら、エンドーサーとしての活動も踏まえ世界からの情報を片っ端から試すという日々が続きました。
そして諦めかけていた昨今、ひょんな事から230vに再度挑戦することになりました。元々はクライアントとして出入りしていた大学生のアーティストが、230vに興味を持っており、その彼と様々に海外サイトを見ているうちに、
『これは行けるかもしれない』
という製品に行き着きました。
しかし、Nemaという規格に250vの電圧を通す製品自体が日本にあまり多くなく、殆ど見かけることのない状況で、その上230v前後の電圧はヨーロッパが大半のため、その活路というものを全て海外に求めることになりました。メーカーにアップされているマニュアルを読み、サポートセンターから見解を聞き出し、ヨーロッパの電圧についてはスイス工科大学で論文が発表されていたので、それを読破することで凡その検討がつくようになりました。正直なところ、電気関係についてはズブの素人だったので、恥ずかしながらNemaという規格すら知りませんでした。そしてうちのスタジオに来ている規格は20AのNemaであることもわかり、そこから30Aの容量を持つ電源ディストリビューターまで持ち込み、そこから更に10Aのスタジオ用途のディストリビューターに分派させて230vを生成するという手法に行き着きました。凡そ本気で調べた期間は2年間に及び、そこからは実際にやってみるしかありません。
全てのパーツが揃い、接続自体は簡単でしたが、電源を入れる瞬間というものは全て自らの責任で買い集めたものでしたので、正に緊張の一瞬でした。普通に電源ディストリビューターのスイッチが入り、買い集めたパーツたちは一つのムダもなく機能してくれました。さて230vを日本で通電させることには成功しましたが、今度はその負荷に耐えられるか否かを検証しなくてはいけません。数字上では、昇圧したディストリビューターは、10Aまで耐えられ、その上の分配器は30A、そして元々の電源は20Aで来ていますので、余裕で一定の機材は接続できるはずです。恐る恐る接続していきましたが、SSL XL-DESKやSPLのPQなど、大食らいと思える機材からつなげていき、結局は11個ある全てのコネクターを接続しましたが問題なく運用するに至っています。
そして何よりもこのページでレポートしなくてはいけないのが、230vの音ですよね。
端的に申し上げれば別物です。ヨーロッパに行く度に感じていた、非常に微細で広いダイナミックレンジ、そして透き通るスーパークリーンの音を手に入れることができるのは、間違いなく230vで駆動させることにより可能となるシステムであると感じました。いくらユニバーサル100-260v対応だからといっても、やはり高電圧から来る効率的な機材の駆動というものは、音という最終的な形のないエネルギーとして表現されます。それはかなり分かりやすく、特に当方で所有しているMUTECのDDコンバーターとワードクロックからは顕著に感じられる違いを作り出しました。またEQにおいても非常に扱いやすく、変にピーキーな感じがなくなり、SPLのPQにおいては癖のないよりクリーンなサウンドを実現してくれました。そもそも内部電圧が120vで駆動させるわけであり、それが同電圧を外部から収集し、内部の圧力を変えるなど無理が生じていることは想像に難しくはありません。
またコンプレッサー類も、ポンピングが起きやすい設定であっても、より大きな器で抱えられるだけの許容範囲を得ることが出来たと感じられます。一度この230v駆動での世界を知ってしまうと、後戻りは難しく、全ての機材がどれほどのスキルを持っているかを試したくなるはずです。
また、これまで聴いてきた楽曲においても、内声的な鳴り方をしている楽器類が聴き取りやすくなるため、全く別の価値観を探し当てながら楽曲を楽しむことも出来ます。新たな可能性を多分に含むのが230vで、スイッチャーで機材についてくる115vにおいてはまた別の視点からの音が構成されます。違いとして115vは、
「結構シビアな音になったな・・・』
という印象を自分は持ちました。要は、少し神経質な音に感じられ、230vのようなスーパークリーンのサウンドとは異なります。よくアメリカで聴くことのできる音で、何処か大味な中にもそれなりの楽器の音というものを感じ取ることは出来ます。
しかしです、230vを知ってから115vに自分は戻ろうとは到底思えません。音ばかりか、機材自体の動作という面からしても安定度がまるで違います。ルビジュウムの入っているワードクロックは、アップまでこれまでに相当な時間を要していましたが、230vになってからはあっという間に立ち上がってきます。また、AD/DAコンバーターもユニバーサル電源でありながら、やはり今まではワードクロックやMADIとのロックにおいて、何処か頼りなさを感じさせるものがありましたが、230vでは電源が入ってから一発でクロックを探し当てロックされます。これが本来使われるべき電圧の姿だということなのでしょうか。余りに環境が変化してしまいすぎたのと、すべての動作における安定度という安心面を手に入れられ、非常に安価な投資であったと感じています。
ただドイツ・アメリカ・日本と国を跨いでパーツを探していく行為と、またそのパーツ類の相性ということも考えると、若干博打的なところがあるので、実行するまでには結構な勇気がいるかも知れません。
ただ、その苦労は存分に音質として跳ね返ってくることになります。また最後に書き添えることとして、200vと230vではやはりユニバーサル電源でもSSL XL-DESK、並びにMUTECの機材類は異なる音色を発していました。また、最低限行わなければならないベースラインとして、今回の230vも含め、レベルの高いルームチューニング、ワードクロックが必要であると言えるでしょう。
勿論これら構築されてきた要素は、今後行われるレコーディング、ミキシング、マスタリング全ての業務において大きな影響を与えるとともに、もはや完全なボーダーレスとなった音楽制作の分野において、世界の中で大きなアドバンテージを取れることを意味しています。今後の業務が本当に楽しみです。