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今から4年ほど前のことであろうか、早稲田大学の教授よりある日「ピアノの上手な高校生の男の子がいる」として、紹介を受けた。初めて会った彼は、長髪をなびかせながら物凄い勢いでベートーベンを弾きこなし、随分と大人慣れした人物というイメージだった。それから数年の時を経ても、友情関係は持続された。現時点では、早稲田大学に在学し、すっかりと成長した姿を覗かせる。その人物が、今回プロジェクトリーダーとして、企画を牽引した小川実である。
CD制作へと話が進行する数ヶ月前、久々に小川実と顔を合わせ、汗をかいたグラスを前にお互いの近況を報告し合った。私自身はアーティスト達やレコード会社との関係など、自らの仕事の話題が中心であり、彼はこれから待ち構えている将来へ向けての志について、それぞれの立場で話は尽きなかった。年の差は10歳以上あったが、その大人びた会話形式からは、違和感は全くない。しかも決してかしこまっているわけでもなく、あくまで私を友人や音楽を共有する人物として扱ってくれている。
『この若者と、何かがしたい』
ふと私の中に湧き上がるものがあった。直近での返事は期待せず、気長に待つつもりで言ってみた。
『CDを作ってみるかい?』
彼は二つ返事だった。
『はい』
とだけ。ここから長い道のりを経ることとなった。音楽制作とは地道な作業の連続であり、自らの限界と立ち向かう行為でもある。そんな気概を理解するであろう、制作に参加する勇士を小川の紹介で募り、その中から更にメンバーを厳選し、重松和人と山田翔平が加わった。
そもそもこのCDは、初めからプランニングが存在した訳ではない。マーケティングが先行したものでもない。単純に人と人とが情熱を共有し、思いを寄せ合い、自らの立場で最大限の力を発揮しようとした結果が、『PASSION』という形へと昇華したのである。
この音源には、熱き思いと共に様々な技術も導入されている。マスター音源にはDSD規格と呼ばれる、CDに対して数十倍もの情報量で記録されるレコーダーを用いた。また、CDで使用されているPCM規格においても4倍以上の情報量で演奏者たちの息吹を余すところなくレコーディングし、通常のCD規格44.1kHzへとパッケージングした。良いと思えたテイクは、多少の調律の狂いや椅子の軋み音も気にせず、レコーディングされたありのままの音を記録した。テイクによっては一発録りも存在し、レコーディングに要した2日間において、ホール使用時間ラスト20分の極限状態で録ったテイクも採用した。こんなスリリングなレコーディングは、正直余り経験したくないものであるが、自らと向き合い、情熱の丈を燃やし尽くした彼らの姿を、身内ながら誇りに思う。
エグゼクティブ・プロデューサー 古屋博敏
(ライナーノーツより)
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