本文へスキップ

ブログ・コラム

電話でのお問い合わせはTEL.043-376-5989

〒261-0012 千葉県千葉市美浜区磯辺8-15-6

マスタリング

SPL新製品、Phonitor se、Phonitor x、Phonitor 2、Director Mk2の聴き比べ


本日SPL社の新製品における聴き比べを行いました。積み上げられたタワーは、上から順にPhonitor x、Phonitor 2、Phonitor se、Director Mk2で、内蔵のDAコンバーターを用いるのか、或いはDirector Mk 2を用いて、アナログ経由であくまでヘッドフォンアンプとしてPhonitorを用いるのか?などなど、様々な流れで聴き比べを行ってみました。

また、興味深かったのがDirector Mk 2の存在で、簡単に言うと余りの素晴らしさにこれまで使ってきた同じSPLのMercuryからDirector Mk2に乗り換えることにしました。端的に言ってしまえば、当社のスタジオくらいに機材がかなりの余裕の中で選択できる環境では、MercuryはToo muchという結論で、Director Mk 2はリスニング環境にも用いられるほどにクリーンで透明感あふれるDAC故に、こちらのほうが扱いやすいと感じさせるものがありました。Kii Threeとの相性もぴったりで、物凄くリラックスして美しい音楽を楽しむことができ、得るものの多いテストとなりました。

使用したヘッドフォンは、HEDD社のHEDDPhoneで、現在考えられるヘッドフォンの中で最高傑作とも言える逸品かと思います。マスタリング時にも、スピーカーだけでは見抜くことの出来ないステレオイメージを作るうえでのミスなど、克明に音形を映し出してくれることから多用している機材の一つになります。それでは早速行ってみたいと思います。

先ず着目したのは、Phonitor se、Phonitor x、Phonitor 2の音質と機能の違いです。DAコンバーターはDirecotor Mk2を用いて、ダイレクトアウトからRCAコネクター経由で各3機種に再生させる手法を用いました。Phonitor 2以外は自らDACを持ち合わせている機材ですが、最高性能を持ち合わせるDirecotor Mk2とのカップリングで先ずはヘッドフォンアンプとしての性能を確かめます。電源はそれぞれに115vを用いて、Director Mk2に用いたUSBケーブルも至って普通の市販品を選びました。機材の性能が上がれば上がるほど、オーディオ用の特殊ケーブルというのは余りお勧めできないといった感じでしょうか。再生環境におけるサンプルレートは、192kHzと44.1kHz双方を用いました。

さて最初はPhonitor xとPhonitor 2の比較から。Phonitor 2の発売から大分時間が経過したこともあり、Phonitor マトリックスなどの機能は似た雰囲気もありますが、音質的には全く別物です。Phonitor xの方が遥かに幅広くも音楽的なサウンドテイストを持ち合わせながら、スタジオ環境で使用することを前提としていると感じさせられます。密度の高いサウンドは双方に持ち合わせていますが、Phonitor 2は武骨といった言葉に形容できる感じです。対してPhonitor xは正にリッチという言葉が似合います。スタジオ環境に振り切った感のあるPhonitor 2でしたが、『音楽を楽しむ』という意味では課題ありだったかもしれません。そこから一気に観賞用さえも網羅する形でPhonitor xはリリースされてきており、ミキシングやマスタリングにおいても音楽的要素を含みながら、自在に音像を作り上げることが可能といった感があります。また、DACを持ち合わせていると共に、ヘッドフォンアンプとスピーカーアウトも装備されていることから、DACとして全ての機能を持ち合わせているとも言え、この性能・設定価格からするとベストバイの一つに含まれて来るかと思います。

更に説明を付け加えるのであれば、今回のPhonitor xは『リアル』という言葉が合うのかもしれません。武骨とは違う、真に楽器そのものが発するサウンドを、そのままのテイストで、しかしSPLの哲学の一つとして強く押し出されている120vテクノロジーならではの、密度を徹底的に上げながらも、ツルっとした更にはノーブルでリッチテイスト溢れるサウンドは、正に昨今のSPLを代表する機材に用いられている味わいそのものであると言えます。

 

 

そして次にPhonitor seとPhonitor xの比較です。Phonitor seとDirector Mk2は、今回の試聴で最も惚れ込んでしまった構成になりました。Phonitor seにはXLRの入力やDAC搭載モデルではAES/EBUが省かれていることから、ぱっと見はハイエンド・オーディオ向けの機材とも捉えられるのですが、実際に聴いてみた感じとしては『あ、マスタリングで使いたい』と思わせるほどの解像度と、発想力を掻き立てられる柔軟性や音楽性溢れる幅広い音像というものを実現しているヘッドフォンアンプでした。これほどの機材が、今やDACが内蔵さえていなければ10万円ちょっとで買えてしまうというのは、驚異的なレベルで機材が進化してきているとも言えるのですが、更にはPhonitor マトリックスが2パターンの選択肢に限られている仕様とはいえ、非常に良く機能してくれることも驚きでした。逆にメーカー側で『これがデファクトスタンダード』と思えるマトリックスを、2種類ほど抽出して搭載してくれている方がありがたいような気もし、その上サウンドがご機嫌となれば使い勝手としてはかえって単純故に迷うこともないということで、Simple is the bestの考え方に落ち着く感もあります。

そして実際のサウンドテイストとしては、Phonitor xよりも『リアリティ』という意味では若干弱さを感じつつも、『楽曲を表現する意味での美しさ』という観点からは明らかに程良いさじ加減で演出されていると感じさせてくれました。120vテクノロジーがイメージの全面に出てくるSPLの機材の印象というものは、ある種の『強さと華やかさ』みたいなもを嫌顔にでも感じざるを得ないのですが、このPhonitor seに至ってはSPLらしい、ある種の嫌味みたいなものが消されたことで、憎い位の演出によって非常に上手く纏めらえていると感じさせてくれるサウンドでした。

 

 

そしてDAC搭載モデルである、Phonitor x、Phonitor seそしてDAC専用機であるDirector Mk2の聴き比べです。Phonitor x、Phonitor seはDAC非搭載のモデルも展開するということで決まっておりますので、外部の好きなDACを選ぶことも可能です。先ずPhonitor x、Pnonitor seのDAC機能としては、凡そ同じ印象を受けます。Director Mk2の音さえ聴いていなければ、非常に良くできた次世代のDAC+ヘッドフォンアンプと言えるのですが、Director Mk2経由で聴いてしまうと軍配は圧倒的にDAC専用機に上がってしまいます。最も異なって感じられたのが色彩とも言える音色のカラーバリエーションで、Director Mk2が発するサウンドはイタリア人画家が用いるような、青一つとっても種々の色合いを持ち合わせているかのように、正にカラフルと感じさせてくれました。対してDAC内蔵モデルは、これまで販売されてきている多くのDACのような単一的なサウンドではなく、リアルとリッチの共存という意味では素晴らしい出来栄えです。しかし、Director Mk2のような色合いというところに関しては、一歩譲るところがあるかな・・・といったイメージでした。

ここにSPL社の新製品におけるインプレッションをさせて頂きましたが、今回のテストではやり切れていない聴き方、用い方も多々あるかと思います。また、予算を考えた上で何を優先するのかで機材を選んでいくこともできるかと思います。今回テストをしている代理店側の人間としても、SPL社の中でこれほどに哲学が明確化され、年代や機種によりそれぞれコンセプトを細かく設定した上で、音色を作り上げてくるSPLが持つ感性と技術力の高さを改めて体感できた出来でもありました。