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ピアノレコーディング - レポート

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マスタリング

ピアノレコーディング レポートreport of piano recording

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大ホールにおけるピアノレコーディング・サウンドプロデュースの一例

ピアノレコーディング風景
拘りのクライアントから、お声掛けを頂いてから実際のレコーディングまでに、1年ほどのインターバルを持ってのレコーディングなった、思い出深いセッションをご紹介したいと思います。ピアノレコーディングというだけあり、ソロのピアノレコーディングの場合には、正にピアノが主役となるので、そのコンディションや音色というものに対して、多くの拘りを持ち当日に臨むことは大前提となります。

今回の場合は、白根桃源文化会館を使用することになり、それは既に十数年前に経験していた、国立音楽大学の下地啓二教授のレコーディングで使用した折に、非常に素晴らしい響きを体感しての当方からの推薦によるものでした。スタインウェイピアノは、1980年代初頭の楽器であり、スタインウェイ本社のM&Aから10年も経過していない故に、未だにスタインウェイ本来の音色を嗅ぐことの出来る逸品でした。クライアントが自ら試し弾きのために一度事前セッションをこなし、えらくこのホールとピアノのセットを気に入り、当日のレコーディングを迎えることとなりました。

それまでに幾度となくミーティングを重ね、このレコーディングで求める最上質の音色というものを叩き込まれ、そしてしっかりとしたした理解の上に土台を敷く緻密さを持ってのレコーディングということになりました。マイク選定、マイク位置選定、マイクプリアンプ、サンプリングレート、AD/DAコンバーター・ミキシング機材の選定など、これらを総合的に考えた時に、求める音色へと昇華させるための必要とされる全て条件を整えることが、私達の仕事として任されました。これはレコーディングエンジニアの枠を大きく超越し、サウンドプロデューサーとしての立ち位置にて、トータルで音を作り上げることを意味していました。正にこの手の仕事は、私達が最も得意とする業務であるとも言えます。



成功の秘訣の一つは、接近マイクのEarthworks PM40

ピアノレコーディングマイク Earthworks PM40
広大なホールでアンビエンスやミドルのマイクというものは、非常に重要になることは言うまでもありません。正に楽音における響きの主軸を成すわけですから、最も重要な音の要素における主成分であることは間違いないでしょう。

しかし、その音の主成分となるものの一つには、肉質として必要とされる核となる音も存在しなくてはなりません。これまでピアノレコーディングにおいて、この接近(ニアフィールド)のマイキングが最も手を焼き、尚且最も欲しい音の一つであったことは間違いありません。ピアノは複雑な構成を持つ楽器故に、様々な音の要素はあるにせよ、ハンマーの打弦音やダンパーの上下運動における動作音が邪魔となり、接近してのレコーディングはほぼ不可能と思える程でした。どうにかアクションの動作音を避けて収録をしたとしても、何処かに妥協や後のノイズ処理に追われるということは言うに及ばず、幾多も経験してきた苦い経験と言えます。

これらを一気に解決したのが、Earthworks PM40の存在でした。ハンマーやダンパーのすぐ近くに特殊なマイク2本で集音しているにも拘らず、ほぼピアノならではのノイズを収録することはなく、音に対して非常に繊細なクライアントの耳で聴いたとしても、他のマイクとのブレンドにより後のノイズ処理はほぼ不要という状況にまで、攻めたマイキングでリアルな音をキャプチャーできます。単に広大なイメージの音の構成ではピアノによる楽音が拡散してしまい、何ら核のない音で終始してしまいます。勿論響きの持つ楽音の在り方というものは、宮廷音楽時代からの必要条件であることは間違いありませんが、更には現代ならではの表現方法・理解としては、楽器のリアリティを如何にパッキングするのか?という箇所に集約されている部分もあり、それ故にハイレゾリューションのレコーディングが前提となる昨今のクラシック音楽の収録現場では、当然のごとく高解像度に対応したマイクや機材が求められ、それとともに細部に渡る些細な音も全て収録するという神経をすり減らす作品作りとも言えます。勿論このEarthworks PM40においても、50kHzまで高音の伸びたマイクであると共に、マイクプリアンプに至っては300kHzまでが収録を可能とするGordonを使用しました。



全てがハイレゾ対応の機材で収録、そして最終の音決めを行う

ピアノレコーディング マイクプリアンプ
その他のマイクには、SennheiseやSonyのハイレゾリューションマイクを用い、マイクプリアンプはSPL社がエンドーサー向けに初回ロットを支給してくれた、150dBものダイナミックレンジを誇るCrescendoを使用(日本国内未発表)。勿論ハイレゾ仕様ではあるが、それ以上に魅力的なのはその音像の大きさと明瞭度です。デジタルマイクには多数の制約がありますが、アナログには一切の自由が約束されているにも拘らず、このCrecsendoはデジタルマイクを超える勢いで音像がはっきりと観え、更には各一音一音の存在感というもののパワーが、これまでのマイクプリアンプで経験したそれとは全く異なります。これは明らかに次世代の音をSPL社が具現化してきたと言え、その素晴らしき音は新たな時代の幕開けを思わせるものでもあります。

ただこのCrescendoを用いた場合、これまでのマイキングでは全く通用しなく、新たな考え方に対しての柔軟性がエンジニア・プロデューサーには求められることも間違いありません。音像の明瞭度・大きさが異なるということは、それを計算に入れないと、とてつもなく扱い難い楽音になることは間違いありません。これまでのマイクプリアンプでは4本必要であったマイクが2本で十分になり、更には余った2本を他のポイントに置いて試すということも可能になります。当初使用した折には、収録したマイクの音を幾つかOffにしたい衝動に駆られるほどに、やたらに鮮明さとパワーを感じる音であったことを覚えています。慣れてくると、その匙加減というものを使い分けられるようになって行きます。

この回のピアノレコーディングでも、クライアントの求めた微細な表現と、ホールの豊かな響きを大きな音像で表現するために、このマイクプリアンプが大活躍し成功を収めました。



ピアノレコーディング・ミキシング
音源を持ち帰り作業は続きます。クライアントの拘りの強さから、DAW内でのミキシングは行わず、SSLのコンソールにレコーディングされた384kHz、8トラックのピアノレコーディング音源が流し込まれます。これはSEQUOIAのような、ハイエンドのDAW内でも大きなダイナミックレンジを受け止めることができず、更には微細な表現を柔らかく映し出すにはアナログのコンソールを必要としたからです。また、昨今のクラシックレコーディングでは、迫力ある音場を作り上げるために音圧を上げる傾向があるため、尚の事コンソール内でのミキシングを選択しました。
また、アナログであれば384kHzのような、PCMとしては最大の容量を持つ音源であっても、特段何ら影響を受けずに作業を継続出来ることもミキシングコンソールを用いた一因と言えます。



ピアノレコーディング・マスタリング
更にはマスタリングにおいても、アナログのイコライザーを多用し楽音を作り上げていきます。これもクラシックならではのダイナミックレンジと、音楽表現を最重要視した結果の内容であると共に、クライアントからDAW内で仮ミキシング・マスタリングした音源の評価が悪く、やはり本格的な形でマスタリングをするよう依頼を受けたが故の判断でもありました。

最近のクラシック音楽の在り方、また楽音の捉え方というものは、ロシアやドイツを発祥とし、大きく変貌を遂げたことは間違いありません。近年のクラシック音楽は、ポップスとの境を限りなく無くしていく方向性に走っており、こうした生の現場からも強く時代のトレンドというものを感じ取ることの出来る仕上がりとなりました。

激しくやり取りされたクライアントとのサウンドプロデュース・エンジニアリングは、様々な新たな境地を見渡す絶好の機会ともなりました。